皆さん、こんにちは。
ここ何回かは、Microsoft365の法人向けライセンスや、同ライセンスを保有していれば無料で利用できるPower Platformのサービスについて解説してきました。
◇前回の記事「Microsoft365法人ライセンスで中小企業DXを進めましょう」(2024/11/26)
これらのサービスは全てクラウドサービスとして提供されています。
そもそもクラウドとは何なのか。
今回はクラウドサービスのメリットについて解説したいと思います。
クラウドサービスとは何か
クラウドサービスとは、クラウドサービス提供事業者が、インターネットにつながるどこかの拠点にサーバーシステムを作り、それにより提供されるサービスを、インターネットを通じて利用することを言います。
「どこかの拠点」がどこにあるかは、基本的に分かりません。
インターネットを通じていつでもどこでも利用できるのですから、サーバーの場所がどこかは、もはやどうでも良い話なのです。
災害等でサーバーが被害を受けることを避けるため、複数の箇所に分散している場合もありますし、海外に設置している場合もあります。
全てクラウドサービス提供事業者の責任において、安全確実に、また継続的にサービスが提供できるようなインフラを構築しているわけです。
もちろんインターネットを介して利用するのですから、サービス利用者側が高速なインターネットに接続し、利用できることが大前提です。
こうしたサービスは、2010年ごろ以降、モバイルブロードバンドが発達し、パソコンの他、スマートフォンやタブレットなどによりいつでもどこでも高速なインターネットにアクセスできる環境が社会的に整ってきたことで急速に普及しました。
クラウドの反対語は「オンプレミス」、通称オンプレと言います。
「On the Premises」、premiseは土地や建物を意味するので、「敷地内」といった意味合いとなり、自社内にコンピュータのハードウェアを用意して、サーバー環境を構築するのがオンプレです。
かつて、企業が何か自社用のシステムとか、あるいはサービス提供用のシステムを構築する場合は、基本的にオンプレで作っていました。
いまやオンプレでシステムを構築するケースは、かなり少なくなっているのではないでしょうか。
AWSやAzure(アジュール)など、高い信頼性を持つ安価なクラウド基盤が提供されるようになったことで、これらを利用してシステム構築することがスタンダードになりつつあると思います(AWSやAzureについては後述します)。
クラウドサービスの種類
クラウドサービスには、上の図のように、幾つかの種類があります。
IaaS(イアース):Infrastructure as a Service
システムを構築する上でのサーバー機器、つまりパソコンで言えばコンピュータのハードウェアを提供するイメージで、企業やサービス提供事業者がその上にOS(オペレーション・システム)からシステムを構築することができます。特殊な独自OSを使っているサービスなどが、このIaaS基盤を使うのだと思います。
PaaS(パース):Platform as a Service
IaaSの上に、WindowsやLinuxなどのOSが乗った状態で提供されるクラウド基盤で、企業やサービス提供事業者はその上に様々なアプリケーションシステムを構築し、利用者に提供することができます。
SaaS(サーズ):Software as a Service
クラウド基盤を用いて構築されたアプリケーションによるサービスそのもののことを言います。Microsoft365、あるいは以前からこのニュースレターで紹介してきた各種インターネットFAXサービス、AutoMemo(自動文字起こしサービス)、Wix(Webサイト作成)、freeeサイン(電子契約サービス)なども、全てSaaSとして提供されているものです。
◇過去の記事「インターネットFAXサービスについて」(2024/10/23)
◇過去の記事「ソースネクストAutoMemoの自動文字起こしを使ってみた」(2024/9/3)
◇過去の記事「ホームページ制作ツールWixの実際」(2024/8/12)
◇過去の記事「実際にやってみた電子契約の締結はめちゃくちゃ簡単」(2024/1/23)
クラウドサービスのメリットとガバメントクラウド
クラウドサービスは、「仮想化」と言って、従来は物理的なコンピュータのハードウェア上に作っていたものが、ソフトウェア的に(仮想的に)構築できるようになったという技術がベースになっています。
クラウドサービスになったことで、何が良いのか。
まず、システムを構築したり、アプリケーションサービスを開発したりする事業者にとっては、オンプレのハードウェアを用意する必要がないため、初期投資コストが不要になる他、調達プロセス無しにスピーディーにシステム構築に着手し、進めることができます。
またオンプレ環境では、常にOSなどのアップデートを欠かさず、ハッカーによる攻撃やコンピュータウィルスの侵入から防御しなければなりませんが、クラウドなら、IaaSやPaaSの提供事業者に任せることができます。
災害からサーバーシステムを守るための拠点の分散化なども、前述のとおりクラウドサービス提供事業者側で対応してくれています。
最近のソフトウェアサービスを提供するスタートアップ企業のほとんどは、IaaSやPaaSなどのクラウド基盤を利用し、初期投資コストを抑え、スピーディーにシステム開発を行っていることは間違いありません。
スタートアップに限らず、例えばある大手回転寿司チェーン企業では、年間10億皿にICタグを付けて売れ筋のネタなどを分析するシステムを、クラウド(AWS)を利用して構築した結果、食品廃棄率の75%削減に成功したそうで、こうしたシステムでは、通常なら1億以上のサーバー構築費用がかかるところを、AWS利用により3千万円程度で済んだといった事例は代表的な成功例とされています。
ただし、このようなクラウド基盤の利用に当たっては、信頼性の高いサービスを利用することがとても重要です。
デジタル庁は、「ガバメントクラウド」と言って、政府や地方自治体が迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とするためのクラウドサービスを認定しており、2022年10月までに認定を受けたのは、次の4つのクラウドサービスでした。
Amazon Web Service(AWS)
Microsoft Azure
Google Cloud(旧名称Google Cloud Platform)
Oracle Cloud Infrastructure
◇ガバメントクラウド(デジタル庁)
いずれも海外の巨大IT企業が提供するクラウドサービスで、国内勢がいないのがちょっと寂しいですよね。
ここに、2023年11月、初めて国産のガバメントクラウドとして、さくらインターネットが提供する「さくらのクラウド」が認定を受けました。
さすが、インターネット業界の老舗で高い技術力に定評のあるさくらインターネットですね!
これらガバメントクラウドにも認定されたクラウド基盤であれば、信頼性やセキュリティの面からも、安心して利用できるクラウドサービスであると言えると思います。
前回記事で紹介したMicrosoft365なども、カバメントクラウドとして認定を受けているMicrosoft Azureの基盤の上で、Microsoft自身が提供するクラウドサービス(SaaS)であり、十分な信頼性と安全性を備えているものと言えます。
クラウドサービスを積極的に活用しましょう
以上のように、クラウドサービスはインターネット時代のサービス基盤として、もはや無くてはならない存在。
オンプレの自社サーバー環境を構築・運用するのに比べ、むしろ信頼性や保守性にも優れ、低コストで環境構築が可能となります。
一部の大企業で、クラウドサービス提供事業者にアウトソースするコストが高くなりすぎて、オンプレに回帰する動きもあるようですが、ごく例外的な事例と言えるでしょう。
上記のガバメントクラウドに、投資体力があるはずの国内大手通信キャリアが入っていないのは疑問に思いますが、今後のAI時代への展開も踏まえて、AIデータセンターの基盤整備を進めようとしている動きもあるようなので、今後の動向を注視したいところです。
中小企業の皆様におかれては、こうしたクラウドサービスの特性を理解し、積極的に利用されることをお薦めしたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
宜しくお願い致します。
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