時給1000円超時代に不可欠な業務革新
- 北島コウ

- 9月16日
- 読了時間: 6分
皆さん、こんにちは。
先日、2025年度の地域別最低賃金の答申がなされ、全ての都道府県で最低時給が1,000円を超える見通しとなりました。
全国加重平均額は昨年度から66円引き上げの1,121円で、この引き上げ幅は現制度となって以降の最高額だそうです。
◇厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」(2025/9/5)
◇日本経済新聞「時給1000円超時代(上)最賃上げ、地方発のうねり」(2025/9/10)※全文を読むにはID登録が必要です。
今回は、時給1000円超時代を迎えた中での、中小企業様の業務革新について、考えたいと思います。

地方でも高い賃上げ水準が答申
上の日経新聞記事によると、物価上昇は人口100万人未満の地方都市でも高い上昇率を示しており、「地方=安い」とは言い切れない傾向が強まっているそうです。
これにより、地方の県においても高い賃上げを答申される結果となったことが、全都道府県で1000円超につながりました。
少し前までは「デフレ経済からの脱却」が大きな社会課題であり、「インフレ率2%を目指す」などとしていたことを考えれば、経済状況の急峻な変化には戸惑うばかりです。
しかしながら一方で、米国ではマクドナルドのアルバイトの時給が日本円換算で3,000円を超えるケースもあるそうで、内外価格差の観点から言って、まだまだこれは序の口なのかもしれません。
最低賃金のアップは、物価高に悩む国民にとっては不可欠ですが、一方で中小企業経営を直撃します。
加えて少子化に伴う人手不足は構造的で、先行きの改善は全く見込めません。
本ニュースレターではこれまで、中小企業のDXによる業務革新の必要性を繰り返し述べてきました。
◇過去の記事「業務の見える化には経営者の強い意思が必要」(2025/4/8)
◇過去の記事「DXの前にまず必要な『BPR』とは?」(2025/6/24)
最低賃金単価が全都道府県で1000円超となる時代を迎えたことで、中小企業の業務革新は待ったなしの段階に来ていると言えると思います。

時給1000円超時代の構造的課題
もはや人を増やして残業で乗り切るやり方は限界です。
注文の波が激しい会社の場合は特に、忙しい時と暇な時の差を人員調整で吸収することが難しいでしょう。
これからは、作業のやり方を標準化しつつ、変動にも柔軟に対応できる体制が欠かせません。
人件費が高くなるということは、「付加価値を生まない作業」に人の時間を割くことが、これまで以上に大きな損失になる、ということです。
紙の伝票や手書き作業、属人的なExcel、メールでのやり取りといったムダは、企業体力をじわじわと削っていきます。
人口減少の流れを考えると、人手不足は一時的なものではなく、これからずっと続く「構造的な課題」です。
こうした状況で競争力を保ち、伸ばしていくためには、単なるコスト削減では足りません。
仕事のやり方そのものを作り替える必要があります。
つまり「作業時間を減らす」だけではなく、同じ人数でより多くの付加価値を生み出せる仕組みへと転換しなければならないのです。
私はそれこそが「業務革新=プロセス×デジタル」の掛け算だと考えています。

設計図から実装へ――DXの進め方を具体化する
DXによる業務革新は、4段階で進めていくものと考えています。
第一に、現場で実際に発生している業務フローを見える化し、ムリ・ムダ・ムラの所在を特定します。
ここではいわゆるECRS(排除(Eliminate)、結合(Combine)、交換(Rearrange)、簡素化(Simplify):業務改善のフレームワーク)の観点で、紙伝票の撤廃、二重入力の解消、承認処理の簡素化、メール依存の見直しなどを具体化します。
第二に、経営者にとっての「あるべき姿」、「ありたい姿」を実現するためのプラットフォームを選定します。
このとき、スモールスタートが可能で、拡張と連携に強いこと、そして現場が自走できるという観点が重要です。
私としては、Microsoft365の法人向けライセンスにより利用可能なPower Platformの活用をお薦めしたいと考えます。
SharePoint/OneDriveのクラウドストレージを活用してデータや電子ファイルを保管する文書基盤を構築するとともに、アプリ開発ローコードツールPower Appsにより入力フォームを整備したり、自動化ツールPower Automateでワークフロー化したりするなどにより、紙・FAX・手入力といったボトルネックを一気に解消できます。
販売・在庫・購買・原価などの基幹データは、早期に「一元マスタ」を確立し、後工程での照合作業や突合ミスを減らすことができます。
第三に、生成AIの活用で「標準化しづらい知的作業」の処理効率を上げます。
議事内容の要約、問い合わせへの一次回答、図面や仕様書の要点抽出、マニュアルの更新版作成などは、生成AIに処理させるためのプロンプトをテンプレート化することで、大幅に手間を削減し、スピードアップ可能となるはずです。
第四に、データ可視化とKPI運用によって、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回します。
Excel集計からの脱却を進め、Power BIなどの分析ツール(これもMicrosoft Power Platformで利用可能)で「経営のダッシュボード」を用意すれば、ボトルネックの早期発見と対策が容易になります。
そして最後に、これらの業務革新は、「定着」して初めて成果になります。
社員の教育と運用ルールの策定、権限設計、評価への組み込みまで含めた組織マネジメントの整備を、プロジェクトの初期から計画に織り込むことが成功の決め手となります。
この一連の流れを、時給1000円超時代の要請に応える実効性あるロードマップとして、1~3ヶ月程度のスモールスタートによる短期的成果で効果を実感していただきつつ、業務全体をDX化する中期的(1年~)な変革を設計すべきであると考えます。

「社外DX担当部長」として伴走します
当事業デジタルビズは、デジタルと行政書士の二つのスキルで中小企業様のDXをご支援することをミッションとしています。
上で示した4段階を踏まえ、業務の見える化、ペーパーレス化、システム導入、生成AI活用、モバイルや現場アプリの活用、データ駆動型経営の実現など経営課題に直結するテーマを、「社外DX担当部長」として伴走させていただくことが可能です。
業務革新は一朝一夕にはできません。
コストもかかりますし、業務的な負担も大きく、簡単にはいきません。
しかしながら粘り強くやり遂げていかなければ、これからの時代を生き残る術はないのです。
まず経営者が強い意思を持って、DXによる業務革新を進めていくと腹をくくることが何よりも大事なのではないでしょうか。
中長期の理想像を見据えつつ、ステップバイステップで焦らず進める設計が重要です。
最初の一手は、紙・Excel・メール運用のボトルネックをどこか一ヶ所でも解消し、現場が「変わる喜び」を体験することです。
そこで得た余力を次の改革の原資に回し、改革の雪だるまを転がして、大きく育てていきましょう。
補助金などの活用により、デジタルツール導入にかかる投資負担を軽減する方法も一緒に探ります。
まず一歩踏み出さなければ、何も始まりません。
ぜひお気軽にご相談いただきたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
宜しくお願い致します。
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