皆さん、こんにちは。
最近、「ドイツ人のすごい働き方」(西村栄基著、すばる舎刊)という本を読みました。
2024年の世界のGDP(国内総生産)ランキングにおいて、日本はドイツに抜かれ、3位から4位に後退しました。
1位のアメリカ、2位の中国と違い、ドイツの人口は約8,300万人(2023年)。
日本より人口の少ない国に追い抜かれるということは、一人当たりGDP、すなわち労働生産性では相当な開きがあることを意味し、かなりショッキングな事態ではあります。
本書の副題は、「日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密」。
今後さらなる急速な人口減少が見込まれる日本としては、改めて謙虚にドイツ人の働き方に学ぶ必要があるのではないでしょうか。
今回は、この本を読んで私が感じた点について紹介したいと思います。

以前から気になっていたドイツの生産性の高さ
ドイツの労働生産性の高さについては、実は以前から気になっていました。
2020年、働き方改革やワークライフバランスが大きな社会課題として扱われるようになっていましたが、折しも新型コロナウィルスの急拡大により、多くのお店が休業を余儀なくされたり、学校が休校になったりし、社会が不安になる中、給付金の給付にえらく時間がかかるとか、遠隔授業ができないなどが明らかとなり、日本のIT化やデジタル化が欧米各国に比べてひどく遅れていると実態もあからさまになりました。
当時、まだ現役サラリーマンだった私は、日本が生産性においてそこまで劣後しているという感覚がいまいちピンとこず、いろいろ本を読んで、自分の意見をブログ(note)に書いたりしていました。
◇私が当時書いていたnote記事「働き方改革と生産性向上をめぐる私のモヤモヤ感②」(2020/8/28)
ちょうどこの記事の中でドイツとの比較を行っており、産業構造的に日本とよく似ているにも関わらず、労働時間当たり稼ぐ金額はドイツが1.5倍を超えていることに驚愕しています。
このとき幾つかの本を読んで私が理解したのは、日本はICT活用やDXによる生産性向上の取組みがまだまだ遅れており、それは特に中小企業層において顕著であるということ。
中小企業は、高度経済成長期からの保護政策に守られ、低い最低賃金で安い労働力を確保できることから、生産性向上への取組みが進まず、それが日本産業全体の競争力を阻害している。
また、長年のデフレ構造により、企業経営が価値競争ではなく価格競争に陥っており、日本企業の従業員のエンゲージメント率が国際的に見て非常に低いことも、競争力を削ぐ大きな要因になっている、といったことです。
振り返ってみれば、このとき考察したことが、私がデジタルビズ事業を立ち上げようと思った一つのきっかけになっていたと言えるかもしれません。
◇note記事「働き方改革と生産性向上に関して理解したこと」(2020/9/11)
このときはドイツ人の働き方に焦点を当てた本は読んでいませんでしたので、今回の本により、改めてドイツ人が私たち日本人よりも1.5倍も労働生産性が高いという、そのポイントは何か、興味を持って読み進めました。

ドイツ人の働き方で注目した3つのポイント
前置きが長くなりましたが、本書の著者は、自動車向け半導体部品を取り扱う商社など複数の会社で17年に渡りドイツに常駐した経験から、ドイツ流のビジネススタイルを熟知し、いまなお欧州向けビジネスの会社員としてドイツに駐在されているということです。
本書では様々な角度からドイツ人のビジネススタイルの特徴や、日本人との違いを解説していますが、私が特に気になった点を3つ挙げたいと思います。
(1) 整理整頓は生活の基本
著者によると、ドイツには「人生の半分は整理整頓」ということわざがあるほど、片付けや整頓に強いこだわりがあるそうです。
日本でも「5S」と言って、整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、といったスローガンや活動は、主に製造業などで重視されてきましたが、ドイツではそれが人々の「生き方の基本原則」と言えるまでに根付いており、著者の目から見ても異常と思うほどのこだわりなのだそうです。
実際、私たちが探し物にかけている時間は、馬鹿になりません。
また、整理整頓された環境で働くことは集中力を高め、ストレスを減らすという研究報告もあるそうです。
デジタル化、ペーパーレス化が進まず、紙の山に囲まれ、いまだにいつも書類を探していることはないでしょうか?
整理整頓を徹底するドイツ人の生活スタイルは、生産性の高さの裏付けの一つであると感じました。
(2) 正社員として働き始めるのは30歳ぐらいというのが一般的
ドイツでは、通常、大学を卒業しただけでは仕事に就くことはできず、大学院や専門学校に通ったり、企業のトレーニングプログラムを受けて訓練を積んだりして、会社に貢献できる即戦力となって始めて入社するそうです。
そして入社したその日から、戦力として貢献することを求められます。
かつての日本では、一流大学に進学することが目的化され、職業スキルの習得は重視されていませんでした。
そして主に大企業では、終身雇用や年功序列といった仕組みの下、ジェネラリストを生み出し、育成することが一般的でした。
それが「働かない管理職」を生み出し、意思決定が遅い原因の一つになってきたような気がします。
最近ようやく、ジョブ型人事制度などにより、専門性を重視する方向に変わりつつあると言えるかもしれません。
また市場価値、すなわち会社から離れたときに、自分にどのような価値があるのかも意識され始め、リスキリングなどが重視されるようになりつつある、というのが、日本の現在地なのかと思います。

(3) 業務プロセスが明確に文書化され、マニュアルとして整備されている
ドイツ人は一般に年間30日の有給休暇が与えられ、週末や祝日も含め、完全に休暇を取得するのが一般的なのだそうです。
ちなみに私は36年のサラリーマン生活で、一度も年間20日の有給休暇を使い切ったことがありませんでしたので、耳の痛い話です。
それだけ休みが多ければ、当然休んでいる人の穴を誰かがカバーしなければならないわけで、そのために業務プロセスが明確に文書化され、チームで共有されることにより、仕事の属人化を防ぐ体制が整っているのだそうです。
私も現役時代に担当した部門で、業務があまりにも属人化、ブラックボックス化していたため、業務プロセスを文書化するプロジェクトを担当したことがありますが、いきなりやろうとしてもそう簡単なことではなく、めちゃくちゃ苦労した経験があります。
「業務プロセスを文書化する」ことが社会文化として定着し、普段から徹底されていなければ、なかなかできることではありません。
逆に、これが徹底されていれば、業務内容が大勢の目に触れてブラッシュアップされ、効率的に運用されていくようになります。
ここにもドイツ人の高い生産性の秘訣が表れていると感じました。
本書では、他にもドイツ人の働き方の特徴が様々な角度で紹介されていますので、ご興味があればぜひお読みいただきたいと思います。
正直な感想として、日本人とは相当違うなと感じました。
もともとワークライフバランスの考え方が定着し、専門的スキルを身に付けて短時間で集中的に仕事をこなし、後は家族や自分の時間を大切にする生活習慣が浸透しているドイツ。
それに比べると、私の現役時代などは、会議は長いし、仕事は属人的、社内報告などのくだらない仕事にかなりの時間を割いているなど、残業時間の多さを競い合うことが仕事をしている証のようになっていました。
労働生産性に格差があって当たり前だと思えてきました。
そもそも、「この30年で、高かった日本の労働生産性が低下した」と思っていること自体が、本当に正しいのかと思えてきて、改めて主要国における一人当たりGDPの順位を時系列で並べてみました(元データはChatGPTに探してきてもらいました)。

生産性向上と業務変革への第一歩を踏み出しましょう
これを見ると、たしかに日本は1990年に8位、1995年にはドイツを抜いて6位という順位になっていますが、このときはバブル期およびその直後であり、バブルにより膨れ上がった経済規模が反映されたおかげという見方もできなくはありません。
この時期が、むしろ「特異点」だとすれば、労働生産性では20位前後、またはそれ以下というのが日本の実力値なのかもしれません。
「失われた30年」などと嘆いているより、むしろ「失われた」のではなく、それが実力値だったと悟り、ここからどうやって生産性を上げていくか、ドイツ人の働き方を見習い、効率化を図っていくことが大事ではないでしょうか。
上で述べた3点で言えば、デジタルビズは中小企業の皆様におけるデジタル化、ペーパーレス化をベースとした社内データの整理整頓や、業務プロセスを見える化、文書化して業務の属人化を解消することなどに貢献できます。
中小企業の皆様の生産性向上、業務変革こそが、人口減少局面においても日本社会を維持・発展させていく鍵です。
これまでの業務のあり方を見直し、より効率的なスタイルに、変革の第一歩を踏み出してみませんか。
それでは今回はこの辺で。
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