DXの前にまず必要な「BPR」とは?
- 北島コウ
- 6月24日
- 読了時間: 5分
皆さん、こんにちは。
先日、ITmediaビジネスONLINEに興味深い記事が掲載されていました。
◇ITmediaビジネスONLINE「『業務が増えるだけ』なデジタル化、なぜ起きる?DX先進、都城市・北見市はどう解決したのか」(2025/6/17)※全文を読むには無料会員登録が必要です。
宮崎県都城市と北海道北見市は、優れたDX事例を表彰する「日本DX大賞」を受賞するなど、全国有数のDX先進自治体なのだそうです。
今回はこの記事をもとに、DXを成功させるポイントについて述べてみたいと思います。

DXの前にまず必要な「BPR」
役所の業務は多くの市民が利用するだけに、いかに利便性を高めるかは大きな課題ですが、この2市はDXによる改革に成功しており、そのカギはデジタル化の前に「BPR(Business Process Re-Engineering)」、つまり「業務改革」であることを紹介しています。
証明書などを発行してもらう手続きのために書類を記入する煩わしさは誰もが経験するところですが、これをいかに効率化するかといった場面でも、そもそも不要な記入項目を削除する、例えば生年月日も書かせて年齢も書かせるといった重複を削除するとか、あるいは市がすでに保有している情報は記載不要にするとか、記載方法を統一するといった細部に渡る整理と見直しをまず行った上でDXを進めたということです。
そして、「足し算のデジタル化」はかえって職員の負担になるとして、BPRで業務自体を見直さないと誰も救われないと述べています。
記事の中で特に強調されていたのは、「DXが目的化してしまうことの危うさ」でした。
このニュースレターでもこれまで何度か述べてきたように、DX(Digital Transformation)とは「デジタルによる変革」を意味しますが、そのポイントは「デジタル化」ではなく、「変革」のほうにあります。
ところが、単にデジタルツールの導入やシステム化だけ行って、それでDXだと言っているケースが非常に多いのではないでしょうか。
都城市と北見市ではまず業務の全体像を可視化し、ムダや重複、不合理なプロセスを洗い出したうえで、「やめる業務はやめる」、「整理するべきものは整理する」といった地道な取り組みを積み重ねました。
その土台があったからこそ、DXで大きな成果が得られたものと言えます。
この「業務の見える化と見直し」の過程が、「BPR」です。
これを行ってこそ、DXのスタートラインに立てるというわけです。
以前にこのニュースレターの記事で、ドイツ人の働き方をもとに業務の見える化の重要性について述べるとともに、かつて私自身が経験した勤務先子会社での業務の属人化を解消する改革の取り組みについて紹介し、いかに時間をかけて粘り強く取り組む必要があるかについて書きました。
◇以前のニュースレター記事「業務の見える化には経営者の強い意思が必要」(2025/4/8)
業務内容のマニュアル化・文書化のため、社内に「文書管理委員会」を立ち上げて、私自身がその事務局長として奮闘したことなども紹介しましたが、これがまさにBPRの取り組みそのものだと思います。

「ルンバは散らかった部屋では動かない」
これは、都城市の職員の言葉で、業務を整理すること無しにデジタルシステムだけを導入しても機能しないという意味です。
うまいこと言うもんだと感心しました。
業務の整理や可視化がされていなければ、どれほど高機能なITツールを導入しても、意味のあるDXにはなりません。
それどころか、かえって複雑性や混乱を増やすだけの結果になりかねないのです。
しかし現実には、何かデジタルツールを導入して、それで良しとする考え方が根強いのではないでしょうか。
なぜか?
理由のひとつは、短期的な成果が求められるからではないでしょうか。
私が経験した社内改革の例ではないですが、BPRには時間が、それこそ場合によっては年単位でかかることもあり得ます。
それに対して、デジタルツールの導入は短期間で実施でき、それによって業務がこう改善されました、と言えなくもありません。
私も企業に勤務していたときはそうでしたが、1年とか半年単位で成果を求められる中にあっては、手っ取り早く「できました」、「やりました」と言えるものを求めるという気持ちは分からなくもありません。
行政機関の場合は、単年度で決められた予算を執行しなければならないという問題もあるでしょう。
業務を見える化し、ムダを洗い出し、何を残し、何をやめるのかを整理する――これは地道で、本当に成果が出るのか分からない中を模索していく、根気のいる作業です。
だからこそ、北見市の方は、DXを成功に導くポイントの一つとして、「スモールスタートで試行錯誤」することの重要性を挙げています。
これは中小企業様においても、まったく同じだと思います。
長年の慣習で続いてきた業務を立ち止まって見直し、DXの前にまず必要な「BPR」という視点で再構築する。
その上で、真に価値あるデジタル化を進めていく。
付け焼刃の「なんちゃってDX」ではなく、本質的な改革を行うには、今がまさにその好機であり、もしかしたら「最後のチャンス」かもしれません。
デジタルビズは、こうした地道で抜本的なDXへの取り組みを、ご一緒に進めていきたいと考えています。
ぜひお気軽にご相談いただければと思います。
それでは今回はこの辺で。
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