AIエージェントからエンボディドAIへ、これからの進化の行方
- 北島コウ
- 5 日前
- 読了時間: 6分
皆さん、こんにちは。
2022年11月にChatGPTが登場してから、およそ2年半。
その間、第4次AIブームとして「生成AI」という言葉が流行語となり、ビジネスにおいてもようやく活用が進み始めた段階と言えるかと思います。
そして今年は、その次の波として、「AIエージェント」が来ると言われているのはご存じでしょうか?
AIエージェントとは何か。
これまでの生成AIと何が違い、ビジネスのあり方にどのような影響を及ぼすのか。
今回は、AIエージェントと今後のAIの進化について、紹介したいと思います。

AIは「受動的に答える」存在から、「能動的に行動する」存在へ
AIエージェントの定義については、まだ明確なものは定まっていませんが、デル・テクノロジーズのシニアシステムエンジニアである増月孝信氏によれば、「人間の介入をほぼ必要とせず、自律的に意思決定を行い、目標達成のために行動を起こす能力を持つAIシステム」とされています。
◇ITmedia AI Special「未来をひらく次世代のビジネスパートナー『AIエージェント』について学ぶ」
(2025/3/21)
これまでのChatGPTなどの生成AIが、「入力された質問に対して最適な回答を返す」という受動的な存在であったのに対し、AIエージェントは「自ら考え、行動する」という、より能動的な存在である点が大きく異なるということです。
そう言われても具体的にイメージしづらいですが、例えばRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)による業務の自動化を例に考えてみましょう。
Microsoft Power Automateなどを使ったRPAについては、以前よりこのニュースレターでも紹介していますが、人間が事前にフロー(処理手順)を設計し、作成することが前提でした。
その作り方が難しいので、Microsoft Copilotなどの生成AIに手伝ってもらいながら作っていました。
◇過去の記事「やっと見つけた、Copilotの最適な使い道」(2024/11/6)
その後いろいろ試した結果、有料のCopilotを使わずとも、ChatGPT無料版でも、十分にRPAのフローづくりなどを手伝ってもらえることが確認できています。
しかしながら、今後AIエージェントが本格的に普及すると、そもそも人間がフローを設計したり、作ったりする必要すらなくなる可能性があります。
「このイベントが発生したら、誰と誰にメールを送信したい」とか、「毎月決まった日にこの帳票を作成したい」といった目的を、自然言語で伝えるだけで、AIが最適なプロセスを自律的に構築して実行してくれる、AIエージェントとは恐らくそういうことなんだろうというのが、私の理解です。
つまり、これまでは人間が「どのようにやるか」を考え、そのやり方を生成AIに質問していたものが、やり方自体をAIエージェントが自分で考えてくれる。
まさに、生成AIからさらに一歩進んだ、大きなパラダイムシフトが起こるということかと思います。

AIエージェントがもたらすビジネスインパクト
これまで質問に対して文章で答えることが基本だった生成AIに対し、AIエージェントは各種のソフトウェアやWebサービスも自分で操作して、自律的に作業そのものを行ってくれるとなれば、ビジネスの現場では革命的な変化が起きるでしょう。
まず、経理・人事・総務といったコーポレート部門では、定型業務が比較的多いことから、AIエージェントが実用化されたならば、その導入効果は大きいと予想されます。
また、マーケティングリサーチやカスタマーサポート、さらには営業提案といった、これまで人間の介在が必要だった領域でも、AIエージェントによる業務革命が進む可能性があります。
例えばカスタマーサポートでは、現在でもチャットボットを利用したサポートは多数ありますが、正直なところ、ちょっと込み入った内容だと対応できず、結局人間によるサポートに頼らざるを得ないことも多いと思います。
しかしながらAIエージェントを活用したチャットボットが実現し、自然言語による質問に対して、その意味を理解して自律的に解決を導いてくれるとなれば、画期的なことであり、カスタマーサポート業務の効率も大幅にアップするでしょう。
このような変化は、中小企業様にとってもチャンスとなりえるのではないでしょうか。
人手不足に悩む中小企業様こそ、AIエージェントが具現化すれば、その導入により大きな効果を享受できるものと考えられます。

安全性と信頼性の確保が鍵
とはいえ、AIエージェントを実用化するには、まだまだ困難も伴うものと予想されます。
最も恐れるのは、誤作動による被害ではないでしょうか。
例えばRPAによる自動化処理の場合、これまでなら人間が設計したフローを実行するため、設計ミスがあっても検知しやすく、比較的被害が限定的でした。
ところがAIエージェントが自律的にフローを構築・実行するとなると、仮にロジックの誤りが含まれていた場合、その影響が予想以上に広範囲に及ぶ可能性がありますし、どこが誤っているかを検知することも困難かもしれません。
そのため、AIエージェントを実業務に導入する前には、限定的なテスト環境で十分に検証を行う体制が不可欠でしょう。
エラーが起きた場合の被害拡大を防止する設計や、万一の時の手動介入の仕組みも準備しておく必要があります。
情報漏えいの懸念も見過ごせません。
生成AIにおいても、ChatGPTなどとの会話内容がAIの学習に使用されないよう「オプトアウト設定」しておくべきことは、以前のニュースレターでも紹介しました。
◇過去の記事「ChatGPTの情報漏えい対策」(2025/1/28)
今後AIエージェントが自律的に業務を行うようになると、様々な接点で顧客情報や個人情報に接する可能性が増えるため、情報漏えいのリスクも高まると予想されます。
安全にAIエージェントを活用できるようになるためには、これらの対策も含めた、さらなる技術開発の進展が必要であり、それが今後数年で進められていくことになるのではないかと予想します。

そしてエンボディドAIの時代へ
AIエージェントが実用化された暁には、さらにその先に登場すると言われているのが「エンボディドAI」です。
これは、AIエージェントの機能を、ロボットや車、家電などのハードウェアに組み込み、物理的に動作させるものです。
生成AIやAIエージェントは、主にコンピュータやクラウド上といった「デジタル世界」で動作するものです。
これに対しエンボディドAIは、AI機能を各種のハードウェアに組み込むことにより、いよいよ「リアル世界」で活用することとなり、人間の代わりに労働したり、行動を支援したりするという、まさに「体を持ったAI」へと進化するのです。
10年ぐらい先を見据えると、労働力が大幅に不足しているであろう介護業界や土木建設業界、運送業界などを中心に、こうしたエンボディドAIの導入が進むかもしれません。
AIの進化に対して、AIが人間の仕事を奪うことを懸念する声も聞かれます。
しかし私は、日本のように人口減少が進み、労働力不足が深刻化していく国にとって、AIやロボットが人間の代わりを担ってくれることは、むしろ歓迎すべき変化だと思うし、それを進める以外に日本が生き残っていく道は無いとさえ考えています。
生成AIからAIエージェントへ、そしてエンボディドAIへと進化する過程の中で、私たちの働き方や社会の仕組みは大きく変わっていくでしょう。
中小企業の皆様にとっても、こうした技術をどのように取り入れ、活用するかが、今後の成長に大きく関わってきます。
デジタルビズとしても、今後のAIの進化を踏まえつつ、その活用を含めたご提案に取り組んでいきたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
宜しくお願い致します。
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