皆さん、こんにちは。
石破新政権が発足し、いきなり総選挙となりました。
いずれにせよ来年には衆議院議員の任期満了を迎えることから、政権発足直後の期待値の高いうちに、また野党側の選挙協力体制が整っていないうちにというのは、選挙に勝つ戦略としては間違っていないと思います。
11月には米大統領選挙も控えており、政権の枠組みをはっきりさせた上で大統領選挙の結果を受け止めるという思惑もあるでしょう。
総選挙の争点はさまざまありますが、経済政策はその第一といっても過言ではありません。
先日の日経新聞に、「日本経済再生への針路」と題して、上中下の3回シリーズで経済学の識者による論説記事が掲載されました。
その中から、上編として掲載された「人口減少前提に『賢く縮む』」と題する小峰隆夫・大正大学客員教授の論説を中心に紹介したいと思います。
◇日経新聞「経済再生の針路(上) 人口減前提に『賢く縮む』 小峰隆夫氏」(2024/10/3)※全文を読むにはNIKKEI IDへの無料会員登録が必要です。
人口が減ったら日本経済はおしまいなのか
日本の少子高齢化は加速度的に進んでおり、政府はこれによる人口減少により経済が縮小する危機を訴え、さまざまな少子化対策を打っています。
もちろん結婚し子供を持つことを希望する人が、それを叶えられるように、障壁や課題を無くしていくことは大切ですが、ただ小峰教授は、現在の希望出生率1.6、つまり結婚したい人が全て結婚でき、子供を持ちたいと思う数だけ子供が産まれると仮定した出生率を仮に実現できたとしても、人口を維持するために必要な人口置換水準2.07には遠く及ばず、人口減少を食い止めることはもはや不可能だとしています(ちなみに、2023年時点の合計特殊出生率は1.20まで低下しています)。
その上で、人口が減るからといって必ずしも経済規模が縮小するとは限らない。
人口における働く人の割合の拡大、あるいは働く人1人当たりの生産性の伸びによって、実質成長率をアップさせることが可能だとしています。
実際、コロナ前の2010~2019年の時期は、当然人口は減少している局面だったわけですが、GDPは平均0.9%のプラスでした。
これは女性活躍推進政策などによって女性、あるいは高齢者の労働参加率を高める、つまり働く人の割合を拡大したことにより、人口減少の影響をカバーしたということです。
このように、人口は減少することを前提にした上で、人口が減っても社会経済的には問題を生じない、「スマートシュリンク(賢く縮む)」を目指すべきで、人口減少により日本経済は立ち行かなくなるというように過剰に危機感を煽ることは、かえって社会不安を助長することになると警告されています。
人口減少下における経済再生のポイントは
小峰教授の主張は正しいと思います。
いわゆる先進国では、程度の差はあれ、社会の成熟に伴って少子高齢化が進むのはどこも同じであり、恐らくそれは発達した文明の行く末なのだろうと思います。
そんな中でも各国とも労働参加率の拡大や生産性の向上で経済成長を図ることに腐心しているわけです。
我が国の労働参加率の割合は女性や高齢者層の拡大がかなり進んできたこともあり、これ以上の大幅な拡大は望めないかもしれません。
やはり今後の鍵は生産性の向上です。
ドローンや自動運転、ロボット、AIなど、人間の代替となるテクノロジーの活用はもちろんのこととして、さらには日本の企業数の99%を占める中小企業の生産性アップも、重要な鍵と言えるでしょう。
この点で言うと、本シリーズ記事の中編では、植田健一・東京大学教授が、「価格・企業活動に介入するな」と題して、財政・金融政策が企業活動に介入することは、たとえそれが企業を保護するという名目であったとしても、結果的にはほとんど役立たず、むしろ障害になると主張しています。
◇日経新聞「日本経済再生への針路(中) 価格・企業活動に介入するな 植田健一氏」(2024/10/4)※全文を読むにはNIKKEI IDへの無料会員登録が必要です。
日本経済再生の鍵となる中小企業の生産性向上
「失われた30年」などと言われていますが、結果的に諸外国に比較して劣後してしまった経済を再び盛り立て、人口減少下における経済再生を実現するには、これ以上バラマキ的な保護に頼ることなく、苦しくても本質的に強靭な産業基盤を作り上げるしかないのではないでしょうか。
このニュースレターでも何度も書いていますが、DXの本質は、「D」=Digitalではなく、「X」=Transformation(変革)の側にあります。
何かデジタルのシステムを導入してそれで良しということではなく、ビジネスの変革や生産性の革新を実現することこそが重要です。
人口減少していく日本はお先真っ暗、といった過剰な悲観論に踊らされることなく、人口減少下でも日本経済を盛り上げていく肝として、日本産業を支える中小企業の地道な生産性向上、そのポイントとなるDX推進に少しでもお役に立ちたいと考えています。
総選挙の論戦でも、目先の人気取り的な政策ではなく、本格的な経済再生を成し遂げるビジョンを期待し、それを実行する政権を運営してもらいたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
宜しくお願い致します。
ニュースレターの最新号をメールでお知らせします。
こちらのデジタルビズ・トップページよりぜひ配信登録をお願い致します。
Comments