世界の携帯電話変遷の歴史とこれから
- 北島コウ

- 2025年12月2日
- 読了時間: 6分
皆さん、こんにちは。
こんなYouTube動画を見つけました。
◇YouTube:The Rise & Fall of the Largest Cell Phone Brands (1990–2025)
(世界の携帯電話ブランドの興隆と衰退)
1987年に通信事業者に入社した私にとっては、まさにこの30年余りの興隆と衰退の変遷をこの目で見てきました。
今回は、この動画について解説し、今後についても少し予想してみたいと思います。

携帯電話変遷の歴史に見るプレーヤーの劇的変化
1990年当時、世界の携帯電話シェア、トップ9の中に、日本メーカーが5社も入っていました(東芝、沖電気、パナソニック、NEC、三菱電機)。
しかしながら2009年にはトップ12の中から日本メーカーは全て姿を消すことになります(合弁会社Sony Ericssonを除く)。
そして2008年に登場したAppleは、当初世界シェア0.37%だったものが、一挙に階段を駆け上がり、2022年にシェア約22%で世界首位の座を勝ち取ることになります。
今年2025年時点ではAppleと韓国サムスン(Samsung)が激しく首位の座を争い、そして2010年以降に急速にシェア拡大を進めてきた中国メーカー、シャオミ(Xiaomi)、Vivo、Oppo、OnePlus、Realme、ファーウェイ(Huawei)などが、トップ13社中なんと8社を占めるというシェア構造になっています。
こうした携帯電話変遷の歴史は、モバイル通信システムの推移と密接な関係を持っています。
第1世代から現在の第5世代システム(5G)までの流れ、および世界の携帯電話・スマートフォンの台数を、図表にまとめてみました。

1G~2Gの時代は、各国の携帯電話システムはバラバラで、台数も世界全体で数億台に過ぎませんでした。
日本では、電電公社が民営化(1985)されたNTTと、その競争事業者として立ち上がった日本移動通信(IDO)および第二電電(DDI)を母体とするDDIセルラーグループにより、80年代後半に本格的な移動体通信時代を迎えます。
IDOとDDIセルラーは、それぞれNTT方式(NTACS)と米国モトローラ方式(AMPS)を採用し、両社のサービスエリアをどうするかが当時の日米構造協議の大きな争点となり、最終的にIDOが首都圏および東海圏、DDIセルラーがそれ以外の全ての地域を取ることで政治決着しました。
2000年のDDI、KDD(国際電電)、IDOの三社合併により、いまでは両社ともKDDI(au)に統合されていますが、沖縄セルラー電話のみは、合併時に既に株式上場していたことから、今も独立キャリアとして存続しているのが、その名残です。
3G時代まで、日本では「垂直統合型」といって、NTTドコモなどの通信キャリアが携帯電話の仕様を決め、メーカーに発注して製造してもらい、その全数を買い取ってショップや家電量販店などで販売していました。
Eメール(キャリアメール)の他、iモードやEZwebなどの携帯インターネットサービス、写メール(携帯電話内蔵カメラ)、着メロ(着信メロディ)、ワンセグテレビなど、今や懐かしいかつてのサービスは全て通信キャリアが編み出し、日本市場だけに閉じた、いわゆる「ガラパゴス」と言われる構造だったのです。
この時代の携帯電話を「ガラケー」(ガラパゴス携帯電話)と呼ぶのは、このためです。
まだ世界の携帯電話台数が数億~20億台程度の中で、1億人を超える市場規模を持つ日本でのみ急速に拡大したことから、日本の電気メーカー各社が高いシェアを誇っていた状態だったと言えます。

国際標準化によってもたらされた構造変化
しかし、2010年ごろにローンチした4G-LTEによって、大きな構造変化が生じます。
それまでモバイル通信システムがバラバラで、地域によってうまく相互接続ができないなどの無駄が生じていたことから、3G時代を通じて国際標準化に取り組んできた流れが結実し、全世界がLTE方式で統一されたのです。
するとメーカーは1種類の端末でグローバルに展開することができます。
ここで登場したのが、AppleのiPhoneです。
iPhoneは、スティーブ・ジョブズの独創的なデザインとUI(ユーザー・インターフェース)によって、すでに2007年ごろから開発され、注目を集めていましたが、2009年ごろに発売されたiPhone3Gおよび3GSは、全世界対応のLTE方式による高速通信性能をサポートしたことで、世界で爆発的なヒットとなりました。
冒頭のYouTube動画でも、2009年から2012年ごろにかけて、Appleが一気にランキングを駆け上がっていく様子がよく分かると思います。
日本メーカーは、前に述べたとおり、通信キャリアの仕様どおりに生産すれば全数を買い取ってもらえるという、ある意味ぬくぬくとした状態に甘んじていたこともあり、4G-LTEの国際標準化によるグローバル競争に全く付いていけず、一気に脱落していくことになります。
通信システムと並び、携帯電話端末のOS(基本ソフトウェア)、すなわちAppleのiOSとGoogleのAndroidが洗練され、寡占化が進んだことも、構造変化の大きな要因です。
iPhoneに先立ちスマートフォンの原形としてヒットしていたブラックベリー(Blackberry)、あるいはPDA(携帯情報端末)として人気のあったパーム(Palm)などは、独自OSのために市場拡大に付いていけず、どんどんシェアを落としていきました。
ブラックベリーの成功と衰退については、映画「ブラックベリー」に詳しく描かれています。
◇Netflixで鑑賞できる映画「ブラックベリー」
そしてAndroidスマホによって劇的に世界シェアを伸ばしたのが中国メーカー。
いまや世界最大のスマートフォン開発拠点となった深圳(シンセン)で開発・製造された、高性能かつ低価格なスマホが、圧倒的な営業力でアジア、中東、アフリカ市場を席巻していきました。
象徴的なのはインドではないでしょうか。
中国を抜いて世界人口1位となった大国インドですが、スマートフォンメーカーとして知名度のある企業がほとんど見当たりません。
中国メーカーの圧倒的な参入スピードに、インドのメーカーが太刀打ちできなかったことが原因とされています。
欧州においても、2G時代のGSM以来、不動の地位にあったノキア(Nokia)も、中国メーカーのパワーの前に大きくシェアを落としていきました。
そして現在では冒頭に述べたとおり、ハイエンド機ではGalaxyのサムスンとAppleが激しくデッドヒートし、ミドル~ローエンド機のクラスで中国メーカーが世界を席巻しているという市場構造になっているものと言えます。

今後のゲームチェンジの可能性は?
4Gからさらに5G時代を迎えた今、国際標準化の波に乗り損ねた日本メーカーは、世界シェアの面では厳しい状況が続いています。
とは言え、ソニーのエクスペリア(Xperia)はカメラ画質やセンサー技術を武器にクリエーターや写真愛好家などの一部市場では根強い人気を誇っていますし、京セラの法人向けスマートフォン・トルク(TORQUE)など、特徴ある製品で一定の市場ニーズに応えている国内メーカーもあります。
さらに今後は、携帯電話・スマートフォンといった、いわゆるハンドセット端末だけでなく、通信機能を備えた様々なデバイス、すでに今もスマートウォッチやゴーグル型デバイスなど普及し始めているものもありますが、こうした分野でよりバリエーションが広がっていくでしょう。
これからの鍵を握るAI技術、そして日本メーカーが得意とするセンサーや光学系の技術との組合せにより、新たなパラダイム転換が訪れる可能性も無いとは言えません。
栄枯盛衰は世の常。
今が厳しいから、この先もそれが続くとは限りません。
何事につけ、闇が深ければ暁も近いと信じて、取り組んでいくことが重要ではないでしょうか。
では、今回はこの辺で。
宜しくお願い致します。
ニュースレターの最新号をメールでお知らせしますので、こちらのデジタルビズ・トップページより、ぜひ配信登録をお願い致します。














コメント