皆さん、こんにちは。
以前の記事で、スマホから直接衛星通信するサービスについて書きました。
◇過去の記事「スマホから直接衛星通信するサービスとは」(2023/11/28)
このときはクアルコムとイリジウムが計画していた「Snapdragon Satellite」が頓挫し、今後どのような形でサービスが実現されるかと書いていましたが、今年7月30日より、iPhoneで直接衛星通信を使った緊急SOSのサービスが始まったとのことですので、今日はこれについて紹介したいと思います。
iPhoneの衛星経由緊急SOS機能
最近まで山岳医療のテレビドラマが放送されていて、山の中で遭難事故が起こり、携帯電話が圏外のために救助を呼べないといったシーンが出てきていましたが、直接衛星通信による緊急SOSは、このようなケースでもiPhoneから上空の衛星と直接通信してSOSを発報できるサービスです。
対象はiOS17.6以降を搭載したiPhone14以降の機種ということで、残念ながら私の手元には無いのですが、対象機をお持ちであればデモを試せるようなので、ぜひ確認してみて下さい。
対象機種の利用開始から2年間は、無料で利用できるそうです。
警察、消防などの緊急通報の画面に「緊急テキスト」というボタンが表示され、ここに助けが必要な理由(負傷など)を記載すると、衛星の方向にiPhoneを向けるよう表示されます。
衛星と通信接続されると、緊急通報が位置情報やバッテリー残量などの情報とともに送信されるという仕組みになっているそうです。
◇ITmedia News「Appleの『衛星経由の緊急SOS』使い方は?iPhone 14以降できょうから利用可能に」(2024/7/30)
◇Apple Support「iPhone で衛星通信に接続する」(デモの方法について記載されています)
Globalstar衛星との直接通信サービス
実はこの機能は、2022年秋にiPhone14が発売された時期から開始され、米国や欧州ではすでに提供されていましたが、利用する衛星通信サービスのGlobalstarのカバーエリアの関係で、日本は未対応となっていたものが、今回ようやく、世界で17ヶ国目に利用できることとなったものです。
小さなスマートフォン内蔵のアンテナから、上空約1,400キロメートルの衛星に通信データを飛ばすのですから、内容は限定されたものになります。
また衛星の捕捉には時間がかかるため、上空が開けているかといった、その場所の状況にもよりますが、接続に10~15秒、条件によっては1分程度かかることもあるそうです。
いろいろと制限はあるとは言え、これまでイリジウムのようなゴツいアンテナを備えた専用電話機でしかできなかった衛星通信が、普通のスマホから直接できるようになったのは画期的なことだと思います。
これからの季節、また熊出没のニュースが出始めていますが、携帯電話圏外の山間部で熊に襲われたといった場合にも、有効な緊急通報手段ができたと言えるのではないでしょうか。
Androidではいつ実現されるのか?
一方、Android派の私としては、Androidスマホで同様の機能はいつから提供されるのか、気になるところです。
以前の記事でも紹介したスターリンクによるスマホとの直接通信サービス「Direct to Cell(ダイレクト トゥ セル)」が準備されており、SpaceXは9月現在ですでに170機のDTC衛星を打ち上げているそうで、iPhoneと同様のテキストメッセージによる通信サービスは年内にも開始されるとのことです。
そして2025年以降には音声通話、さらにはIoTデータ通信(センサー情報の通信など)もサポートされるとのことです。
DTCは、各国の主要通信事業者と提携し、米国ではT-Mobile、日本ではKDDI(au)が一定期間、独占的に提供するということのようです。
なお、このサービスはAndroidスマホだけでなく、全ての4G-LTE端末で利用できるらしいので、iPhone13以前の機種でも利用できるかもしれません。
農林水産業の人手不足解消や効率化のため、センサーやクラウドを活用したIoTが広がっていますが、山間部などで通信が圏外であるために使えないことがボトルネックになっていました。
AndroidのほうがiPhoneより自由度が高く、様々なデバイス開発も可能ですので、DTCのIoT通信機能が本格化すれば、これまで不可能だった山奥でのIoT活用など、一気に可能性が広がるのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか。
いよいよスマートフォンで直接衛星通信ができる時代の到来ということで、ユースケース的にも可能性が大きく広がりそうな気がします。
その意味で7月30日から日本で開始されたiPhone向けの衛星経由緊急SOS機能は画期的な前進だと思いますが、あまりニュースになっておらず、知らない人が多いのではないでしょうか?
現時点ではiPhone14以降でしか利用できないということで、かなり限定されているからかもしれません。
DTCがスタートした際には、もっと大きく報道されても良いと思います。
それでは今回はこの辺で。
宜しくお願い致します。
ニュースレターの最新号をメールでお知らせします。
こちらのデジタルビズ・トップページよりぜひ配信登録をお願い致します。
Comments