皆さん、こんにちは。
最近、電車の中で「小さな会社の『仕組み化』はなぜやりきれないのか」(小川実著、アスコム刊)という本の広告を見かけました。
読んでみたところ、とても腹落ちするところが多かったので、今日はこの本の内容について紹介したいと思います。

中小企業において「仕組み化」がうまくいかない理由
著者の小川実氏は、20年以上の税理士経験をベースに、HOPグループという税理士、社労士、行政書士等の士業法人グループを率いる代表を務められており、一般社団法人成長企業研究会代表理事という肩書も持つ、中小企業支援の専門家です。
タイトルにある「仕組み化」とは、中小企業を経営していく上でのビジネスモデルとか管理手法などのことです。
ここではだいたい社員数10~30人程度の会社を対象にしているようですが、大企業と異なり人数の少ない中小企業では、営業、経理、社員教育、人事などの全てを、ほぼ社長一人が見なければならず、社長は常に忙殺されています。
そこで例えば販売管理の仕組みを入れて細かく営業目標を設定し行動管理をするとか、人事評価の仕組みを入れるとか、様々な取り組みを行うのですが、どうもうまくいかない。
目標数字ばかり詰められてやる気を失うとか、人事管理が厳しくなったために辛くなり、人が辞めてしまうなどによって、挫折するケースが多いというのです。
また多くの中小企業経営者は、自らの腕一本で会社を立ち上げてきたスーパーマンです。
何でも一人で出来てしまうがゆえに、「仕組み化」しようとしても、ついつい自分がやってしまい、やりきれない、貫けないことになってしまいます。
ある意味、社員のことを信頼しきれていないとも言えるでしょう。
そんな中小企業を数多く見てきた著者は、結論として中小企業の「仕組み化」の前に、ステップゼロが必要であり、それは社長の想いやビジョン(パーパス)を言語化し、社員に対して自分の言葉で伝えることだと述べています。
社長が描く会社の未来を言葉にして、社員と共有するのです。
そのために、具体的な施策として「経営計画発表会」を実施することを強く薦めていると言います。
実際に、創業社長から事業を継承し、経営に悩んでいた二代目社長が、この薦めに従って「経営計画発表会」を実施したところ、それを契機に会社の雰囲気が変わり、「社員のモチベーションがアップしたことが手に取るように分かった」というケースもあったそうです。

大手企業でも徹底して「社長の想いやビジョンを共有」している
実は、私が勤務していた某大手通信事業者では、四半期ごと、つまり3ヶ月に1度、「経営状況説明会」を開催しています。
社長が、全社員に対して、前期の振り返り、市場動向、他社の動向、そして社会の状況などを踏まえて、事業方針や営業戦略などを、1時間ぐらいかけて自らの言葉でプレゼンテーションするのです。
会場で直接社長のプレゼンを聞くのは、本社の部長クラス以上の数百人程度ですが、その様子は動画に撮影され、社内のイントラネットを通じてオンデマンド配信され、全国数万人の社員は必ず視聴しなければならないことになっています。
「見ましたか?」というアンケートも来ます。
さらに部長やグループリーダーは自分が聞いて理解した社長の説明内容を、今度は自分の言葉で、部会やグループ会の場で部下に対して語ってあげなければなりません。
そしてこれもまた「あなたは部長やグループリーダーから説明を受けましたか?」というアンケートも来るのです。
徹底してますよね。
なぜそこまでやるのか。
社長の想いやビジョンをすみずみにまで伝え、各社員がそれを「ジブンゴト化」して、それぞれの業務に取り組んで欲しいと思っているからです。
大手企業だから、こうした取り組みが必要なのかなと思っていました。
ですがこの本を読んで、中小企業でも、いや中小企業だからこそ、さらにこうした取り組みが重要だということを理解することができました。
「むしろ小さい会社ほど社員は社長の考えや会社の進む方向に敏感ですから、積極的に共有しなければなりません」と書かれています。
そして「納得感こそモチベーションの源泉である」と言っています。
まさに、私が勤務していた通信事業者で四半期ごとに「経営状況説明会」を徹底して開催しているのも、このために他なりません。

ステップゼロをベースとして、中小企業を自立的に発展させる「仕組み」をつくる
本書では、このような社長の想いやビジョンの共有をステップゼロとして、中長期経営計画の作成、そして社員を成長させていくための人事考課制度、賃金制度の策定についても具体的な手法を解説しています。
中長期経営計画は、私自身も企業の中で何度も作ってきましたし、人事考課制度や賃金制度は、直接策定に携わったことは無いものの、20年以上の長年の管理職経験の中で、それが社員のモチベーションや成長に直結すること、そして単に制度を策定しただけではダメで、社員の成長を願って、いかにその制度をうまく使いこなしていくかが肝であることを、身に染みて感じてきました。
本書にも書かれていますが、実は社員は「何のために働くのか」「どうすれば成長できるのか」を求めています。
社員の成長こそが企業の発展であるというのは、長く企業人として働いてきた実感です。
これらの経験は大企業の中だけの話でなく、中小企業が社長一人で奮闘している段階から脱皮し、自立的に発展する企業へと進化するためにも必要不可欠なのだと、本書を読んでよく分かりました。
デジタルビズは、中小企業様における「ビジネスの課題解決をお手伝いする」ことをミッションとしていますが、中小企業において社長の想いやビジョンを共有し、社員の皆さんが社長の想いを我が想いとして「ジブンゴト化」して、モチベーション高く成長していくための仕組みづくりは、「ビジネスの課題解決」の土台であるとも言えます。
そのために私の知見や経験を活用していただけるよう、活動を進めていきたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
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