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DeepSeekの登場は生成AIの今後を面白くするか

執筆者の写真: 北島コウ北島コウ

皆さん、こんにちは。

今年1月下旬に中国のAI(人工知能)開発企業DeepSeek(ディープシーク)が新たなAIモデルを発表しました。

これまで、米OpenAI社のChatGPTなどが、莫大なコストをかけてAIモデルを開発していたのが、DeepSeekは桁違いの低コストでChatGPTに匹敵する高性能なAIを実現したということで、これまでAIシステム向けで一強とされてきた米国の半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)の株価が1日にして17%、日本円換算で約90兆円相当も暴落するなど、「DeepSeekショック」と呼ばれる大事件になりました。

DeepSeekは、取得したデータを中国のサーバに送信して保存するなど、個人情報管理上に重大なリスクが懸念されることが個人情報保護委員会(内閣府所管)からも注意喚起されていますので、安易に飛びついて利用するのは避けたほうが良いと思います。

 

◇個人情報保護委員会「DeepSeekに関する情報提供」(2025/2/3)

 

しかしながら、DeepSeekの登場は世界の生成AI開発競争に一石を投じるものであり、今後日本のベンチャーなどにも大きなチャンスが生まれる可能性が出てきたという見解がありますので、今回はこの点について紹介したいと思います。

ちなみに、ChatGPTを利用する際には、こちらの個人情報漏えい対策を参考に、気を付けて利用されることをお薦めします。

◇過去の記事「ChatGPTの情報漏えい対策」(2025/1/28)

AIを表すイメージ画像

ハイパースケーラーが繰り広げてきた「規模の競争」

今回の内容は、私が有料購読している日経クロステックから、以下の記事を参考にしました。

 

◇日経クロステック「NVIDIA一強を支えた巨大な『恐竜AI』の終わり、新種の哺乳類AIがやって来る」(2025/1/31)※全文を読むには有料会員登録が必要です。

 

◇日経クロステック「長文が苦手な『鳥頭(とりがしら)AI』のまま規模追求は無意味、DeepSeekショックの真の意味」(2025/2/14)※全文を読むには有料会員登録が必要です。

 

上の記事内容を踏まえて説明しますと、近年のAI開発においては、AIが「学習するデータの量」、「計算する量」、「モデルのパラメーターの量」がAIの性能に比例するとの考え方(「スケーリング則」と言います)の下で、MicrosoftやGoogleなどの巨大IT企業(ハイパースケーラー)が莫大な資金を投じて、いわば「規模の競争」を繰り広げてきました。

MicrosoftがOpenAIに対して100億ドル出資したとか、ソフトバンクグループがOpenAIとの新プロジェクト「スターゲート」のために今後4年間で5,000億ドルを投資するとか、想像もつかない金額の話が飛び交っているのはそのためです。

ところで、そもそも生成AI機能には、文章の解析機能(エンコーダー機能)と文章の生成機能(デコーダー機能)とがあり、ChatGPTでは後者(文章の生成機能)の学習だけをひたすら大規模化してきたそうです。

言ってみれば「力業(ちからわざ)」で、そこに莫大なコストを投下してきた訳です。

ところが、そうなると必然的に全体的な文章の解析ができず、長文を扱うのが苦手(長文になると最初の部分を忘れてしまう)という欠点を持つことになります。

鳥には短期記憶しかないという俗説があるそうで、上の記事のタイトルになっている「鳥頭(とりがしら)」とは、忘れっぽいことの譬えとして使われる言葉です。

ChatGPTなどの文章生成AIは、言わば「鳥頭AI」だと言っているのです。

以前にこのニュースレターの記事で、ChatGPTベースのMicrosoft Copilot(コパイロット)に、プレゼン用のPowerPointスライドから発表原稿を作らせようとしたところ、たかだか30ページのスライドでも全体を読み取れず、原稿が尻切れトンボになってしまったという事例を紹介しました。

これはまさに「鳥頭AI」という弱点によるものだったんですね。

 

◇過去の記事「Copilotはまだ成長途上」(2024/8/21)


テクノロジーを表すイメージ画像

DeepSeekの登場による潮目の変化

長文でも把握できるよう、文章の解析機能のほうも併せて強化しようとすると、飛躍的に計算量が増えて、ますますコストがかかり、とんでもないカネ食い虫になりつつあるのが、いまのChatGPTの構造なのだそうです。

DeepSeekは、オープンソース化(ソフトウェアのソースコードを公開し、誰でも自由に利用できるようにする開発方式)の手法などを駆使し、また計算アルゴリズムを工夫することにより、巨額のコストをかけずともChatGPTに引けを取らないAI性能を実現できることを証明しました。

これまでカネにものを言わせて突き進んできたAI開発の「規模の競争」に一石を投じ、画期的な技術の登場で状況を一変させるきっかけとなる意味合いがあるのではないかと、記事では述べています。

AI開発の歴史は実は古く、1956年のダートマス会議でAIが初めて提唱されて以来、1980年代の「エキスパートシステム」や、2000年代初頭の「ディープラーニング(深層学習)」登場など、画期的なアイディアによって非連続的に進化してきました。

2022年のChatGPT登場から現在に至る生成AIトレンドは、「第四次AIブーム」と呼ばれています。

世界を変えるようなアイディアやプロダクトは、何も米中の専売特許ではありません。

ハイパースケーラーによる「規模の競争」が全く無意味とは言わないものの、DeepSeekの登場はそれが全てではないことを示しており、知恵と発想で新しい局面を生み出せる可能性を提示したものとして、日本の研究者やエンジニアたちにもチャンスが巡ってくるものと期待し、記事は締めくくられています。

スタートアップのイメージ画像

日本発スタートアップから画期的な進歩が生み出されることに期待

確かに日本のAI研究のトップランナー、東大・松尾研究室から生まれたAIベンチャーや、上の日経クロステック記事でも紹介されているAIスタートアップ、株式会社Sakana AIなど、ユニークな取組みは増えてきています。

ビットコインの発明者とされる「サトシ・ナカモト」が日本人なのかどうかは不明ですが、AI開発の世界でも、その歴史に名を刻むような日本人開発者が現れ、日本の経済や産業を盛り上げてくれることを願ってやみません。

それでは今回はこの辺で。

宜しくお願い致します。

 

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