スマホ新法でアプリ開発競争は活性化するか
- 北島コウ

- 2025年8月5日
- 読了時間: 5分
皆さん、こんにちは。
先日の日経新聞記事によると、昨年6月に成立した、いわゆるスマホ新法(正式名:スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)について、意見公募を踏まえた成案がまとまり、公正取引委員会(公取)よりガイドラインが公表されたそうです。
これにより、今年12月から全面施行される予定とのことで、スマートフォンを巡るアプリ流通のあり方に大きな影響を与えるものとして注目されています。
今回は、このスマホ新法について紹介したいと思います。
◇日本経済新聞「競合アプリストアの排除禁止 スマホ新法指針、Appleは安全懸念」(2025/7/29)※全文を読むには会員登録が必要です。
◇e-GOV「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」

スマホ新法の概要
このスマホ新法では、OSやアプリストア、ブラウザなどの「特定ソフトウェア」を提供する事業者のうち、一定規模以上の事業者を公取が「指定事業者」として指定し、これらの事業者に対する禁止行為が定められています。
そして、違反した場合には課徴金が課されるという規定になっています。
指定事業者には、Apple、iTunes(Appleの関連会社で、App Storeを提供)、Google LLCの3社が、2025年3月26日付で既に指定されています。
禁止事項として定められている主な内容は次のとおりです。
指定事業者がOS(iOSやAndroid)やブラウザ(SafariやChrome)等を通じて得たデータを、競合するアプリやサービス等のために不当に利用すること。
指定事業者のアプリストア(App StoreやPlay Store)で提供するアプリに関して不当な差別的取り扱いをすること。
指定事業者のOSを利用したアプリの提供を自社アプリストアに限定すること。
指定事業者のOSを利用したアプリを、第三者が開設したアプリストアで提供することを妨げること。
指定事業者のアプリストアでアプリを提供するに当たり、指定事業者が提供する課金システム以外を使用しないことを条件とすること。
ただし、サイバーセキュリティの確保や個人情報および青少年の保護のために必要な場合は、この限りではないとされています。

スマホ新法がもたらす構造変化への期待と課題
すなわち、スマホ市場において支配的なiOSとAndroidをベースとしたアプリ提供について、App StoreやPlay Storeによる制限から解放するというのが最大のポイントで、独占禁止法を補完する位置づけとなるものです。
実際、これまでアプリ開発者は、App StoreやPlay Storeといった事実上の「独占的流通チャネル」に依存せざるを得ず、高額な手数料の支払いを義務付けられたり、理由の説明なく提供を停止されたりするなど、優越的地位を利用した取り扱いを受けるケースもあったようです。
これに対し、Appleは特に強く反発しています。
Appleは、App Store以外からのアプリインストール(いわゆる「サイドローディング」)を規制することにより、利用者が有害なアプリをインストールしないよう保護してきたのであり、このような統制ができなくなることにより、利用者の安全性が損なわれると主張しています。
Appleによれば、2024年に770万件のアプリ登録を審査したうち、190万件をプライバシー侵害や不正行為の疑いなどで却下し、さらに3万7,000以上のアプリを削除したとのことです(2025/5/29付け日経新聞より)。
一方のGoogleは、既にAmazon Appstoreなどの外部ストアでの提供も一部認めており、Appleほどの強い反発は見られないものの、安全性や品質を確保するために一定の秩序やルールは必要と訴えています。
今回のスマホ新法は、欧州のデジタル市場法(Digital Markets Act:DMA)をベースとしており、DMAでは、いわゆるGAFAM(Google、Apple、Meta(Facebook)、Amazon、Microsoft)などの巨大プラットフォーマーを「ゲートキーパー」と位置付け、その市場支配力を制限する枠組みを導入しています。
この影響で、App StoreやPlay Store以外のサードパーティーがアプリストアに参入する動きが出てきていますが、同時にポルノアプリなどの有害コンテンツの流通が増加しているとAppleは主張しています。

公平な競争環境と日本産業のエコシステム構築へ
スマートフォンにおけるAndroidとiOSのシェアは、世界全体では概ね3:1でAndroidが多数派であるのに対し、日本国内ではiPhone人気が根強く、6:4でiOSのほうが高いシェアを占めているそうです。
そのため、日本ではAppleによる「保護」の恩恵を受けてきたユーザーが多く、今回の制度変更に不安を覚える声もあるかもしれません。
私個人としては、Appleが行っているような規制を「Apple様の掟」と呼び、そうした保護というか束縛を受けたくないと考え、比較的自由度が高く、柔軟な選択ができるAndroidをずっと使ってきました。
もちろんこれは意見の分かれるところであり、プラットフォーマーによる「管理された安全」を求める方もいらっしゃると思います。
ただ、スタートアップが素晴らしいアプリを開発しても、それがApp StoreやPlay Storeのルールに縛られ、高額な手数料を取られるような構造になっている限り、結果としてイノベーションは阻害されてしまいます。
特に今後は、AIを活用した新たなテクノロジーを次々と開発していく、まさに大きな時代の転換点を迎えつつあります。
その果実がごく一部の巨大プラットフォーマーにだけ吸い上げられてしまうことのないよう、公平な競争市場を整備し、アプリ開発競争を促進することは極めて重要です。
利用者の安全性確保や青少年の保護も大切な課題であることは言うまでもありませんが、それを盾に優越的地位を既得権として主張するのはどうかなというのが正直な感想です。
とは言え、法律を作ったからといって、それだけでアプリ開発が活性化するわけではありません。
App StoreやPlay Storeに代わり、アプリ開発者がもっと好条件で良質なアプリを提供できるような「場」が生まれてこなければ、本当の意味での構造変化は起きません。
せっかく新法によりその環境が整うのですから、例えば大手通信キャリアなどが中心となって、革新的なアプリをリーズナブルな条件で安全に提供できる新たなアプリストアを立ち上げ、有望な国産スタートアップを支援する仕組みを作ってはどうでしょうか。
そうした取り組みが、日本発のアプリ産業やテックスタートアップの成長を後押しする起爆剤となることを期待したいと思います。
それでは今回はこの辺で。
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