皆さん、こんにちは。
「業際問題」というのは、行政書士の業務を行っていく上で、弁護士法や司法書士法などによって他士業者の業務とされているものについては行ってはならず、その境界線を区別することを言います。
例えば行政書士は、行政書士法第1条の2の定義により、「権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」を業として(報酬を得て)行うことができるとされていますので、これにより契約書等を作成することができますが、一方で弁護士法72条は法律事件の鑑定、代理、仲裁、和解といった法律事務を弁護士以外の者が行うことを禁止しています(いわゆる「非弁行為」)ので、行政書士が行えるのは法律事件ではない、つまり紛争性のない契約書の文書作成に限られ、内容に関する法律相談を受けたり、代理人として相手方と交渉したりすることはできません。
したがって、例えば金銭貸借とか離婚のような紛争性の高い契約書の作成は、行政書士には難しいということになるかと思います。
さて年末の日経新聞で、企業法務の弁護士に昨年1年で注目された法務トピックをアンケートしたところ、AIに関するトピックがトップ10内に2件入り、中でも「弁護士法72条と契約書レビューに関する法務省指針」が第2位だったという記事が出ていました。
◇日本経済新聞「<企業法務税務・弁護士調査>ビジネスと人権 注目の1年 弁護士が『革新的』と評した法務トピック」(2023/12/25)※全文を読むには日経IDの登録が必要です。
利用の広がるAI契約書レビューサービス
AI契約書レビューサービスとは、契約書をアップロードするとAIが自動でチェックを行ってくれるサービスです。
ひな形案文の作成や必要条文のヌケモレのチェックなどの他、リスクを指摘し、修正文案や譲歩案までアドバイスしてくれるそうです。
大手を中心にすでに多数の企業で利用が広がっており、企業法務では不可欠なツールとなっていますが、このサービス自体が弁護士法72条の「非弁行為」に抵触する恐れはないかという指摘があり、サービス利用企業でも不安が広がっていたのに対して、昨年8月に法務省が指針を発表したものです。
かいつまんで言うと、報酬を得るものでない、案件に訴訟性がない、鑑定や代理、仲裁といった法律事務に相当しないといういずれかに該当するならばAI契約書レビューサービスを利用することは問題ないし、またこれらのいずれにも該当しない場合であっても、弁護士が補助的に利用するのであれば「非弁行為」には当たらない、という見解が明記されました。
サービス利用の不安が解消され、明快になったとして、利用企業からは歓迎の声が挙がっているとのことです。
行政書士業務とAIとの業際問題は・・・?
この法務省指針により、弁護士業務とAIとの業際問題は明確化されたと言えそうですが、行政書士業務とAIとの業際問題はどうでしょうか。
訴訟性がない案件というと、まさに行政書士の業務領域であり、AI契約書レビューサービスが人間よりもはるかに高速かつ精緻に内容を精査してくれるのであれば、そちらに任せれば良いということになり、行政書士の出る幕は無くなっていくかもしれません。
もちろん行政書士の仕事は契約書作成だけではありませんし、だれもがAI契約書レビューサービスを利用できるわけではありませんが、行政書士としての付加価値性をどう発揮していくか、改めて考えていかねばならないのではないでしょうか。
古来、新たなテクノロジーの台頭によって仕事のあり方も変わっていくのは当然であり、行政書士業務に限らず、AI時代になったとしても人間だからこそできる、人間にしかできない仕事を模索していく必要がありそうです。
私としては、これまで培ってきたデジタルやモバイルに関する知識や経験を活かし、お客様の個別課題に寄り添った最適なソリューションを提供することを中心に据えつつ、そこに行政書士資格も有することを付加価値としてアピールしていければと考えております。
それでは今回はこの辺で。
宜しくお願い致します。
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